二死満塁、ナベ、キリの巻。
《都心の雑踏》
とあるパチンコ屋にパンチパーマにアロハシャツの男。(元7番・レフト・現パチプロ)
ナベがタバコをくわえて座っている。
残り少ない玉。
携帯が鳴るが店内の騒がしさで気付かないナベ。
『チッ。何が新台だ!全然出ねーじゃねぇかチクショ。』
と1人で愚痴っていると、隣の席でジャンジャン出て何箱も玉が積まれている客が、こっちを見ている。
客
『あの‥すいません‥』
ナベ
『別にお前が出てるからってムカついてねーよ。』
客
『いゃ、そっちのすいませんじゃなくて‥あの‥すいませんけど携帯鳴ってますよ‥ていう‥』
ナベ
『ん?ああ。』
ナベ、携帯を取りだし
『なんじゃい?』
周助(ゴンザの部屋から携帯で)
『お誘いです。』
ナベ
『今さら忙しいから早くしろ。』
周助
『‥おもいっきりパチンコ屋の音が聞こえてんぞ?』
ナベ
『うるせーな。今ご機嫌斜めだから面白い話にしろよ?』
周助
『ん?まぁ。ああ。』
ナベ
『だから何だよ!?』
周助
『げんさん、脱獄させようぜ。』
ナベがスッと立ち上がり店を出る。するとナベのいた台が残りの玉が大当たり。
店の外に出たナベが人差し指で片耳を抑えて
『今、なんつった?』
《宅配トラックの中》
『今、なんつった?』
とナベと同じように聞く運転席で作業服を着た(元1番・センター・現宅配業)キリが聞いた。
助手席には、まーしーが乗っている。
『時間がないんだ。明日の夜7時から作戦会議を高校の部室でやる。宗男には言うな。ただめぐるを連れ出してもらう。』
キリ
『待て待て待て!何普通に言ってんだよ?何言ってるか分かってんのか?』
まーしー
『ああ。分かってる。』
キリ
『俺はもうお前らとは違う。家庭がある。甲子園もダメ。しかも周助達が暴力事件起こしてセレクションもパー。いまだに言われるよ。「ああ、あの問題児チームだった野球部ね」て。』
まーしー
『あいつ‥周助、甲子園に連れて行くらしい。げんさんも、めぐるも、俺達も。』
キリ
『‥!?』
まーしー
『お前、鬼山達に絡まれた時に言ったんだよな?「俺達には今しかねんだよ!」て。』
キリは横にトラックを止めてサイドブレーキを上げた。
『お前ら‥本気か?』
まーしー
『少なくとも周助は本気だ。俺も腹をくくった。もううちの高校は廃校で老人ホームだ。部室は残ってるみたいだから、思い出に顔だけでも出せよ?』
と肩を叩いて、降りるまーしー。
残されたキリ。
『俺なんかに何ができんだよ。』
続く。。
コメント一覧