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二死満塁、ナベ、キリの巻。

2011


《都心の雑踏》

とあるパチンコ屋にパンチパーマにアロハシャツの男。(元7番・レフト・現パチプロ)
ナベがタバコをくわえて座っている。

残り少ない玉。



携帯が鳴るが店内の騒がしさで気付かないナベ。


『チッ。何が新台だ!全然出ねーじゃねぇかチクショ。』

と1人で愚痴っていると、隣の席でジャンジャン出て何箱も玉が積まれている客が、こっちを見ている。




『あの‥すいません‥』



ナベ

『別にお前が出てるからってムカついてねーよ。』





『いゃ、そっちのすいませんじゃなくて‥あの‥すいませんけど携帯鳴ってますよ‥ていう‥』


ナベ

『ん?ああ。』


ナベ、携帯を取りだし

『なんじゃい?』


周助(ゴンザの部屋から携帯で)

『お誘いです。』


ナベ

『今さら忙しいから早くしろ。』


周助

『‥おもいっきりパチンコ屋の音が聞こえてんぞ?』

ナベ

『うるせーな。今ご機嫌斜めだから面白い話にしろよ?』



周助

『ん?まぁ。ああ。』



ナベ

『だから何だよ!?』



周助

『げんさん、脱獄させようぜ。』



ナベがスッと立ち上がり店を出る。するとナベのいた台が残りの玉が大当たり。



店の外に出たナベが人差し指で片耳を抑えて

『今、なんつった?』




《宅配トラックの中》

『今、なんつった?』


とナベと同じように聞く運転席で作業服を着た(元1番・センター・現宅配業)キリが聞いた。


助手席には、まーしーが乗っている。


『時間がないんだ。明日の夜7時から作戦会議を高校の部室でやる。宗男には言うな。ただめぐるを連れ出してもらう。』



キリ

『待て待て待て!何普通に言ってんだよ?何言ってるか分かってんのか?』



まーしー

『ああ。分かってる。』



キリ

『俺はもうお前らとは違う。家庭がある。甲子園もダメ。しかも周助達が暴力事件起こしてセレクションもパー。いまだに言われるよ。「ああ、あの問題児チームだった野球部ね」て。』


まーしー

『あいつ‥周助、甲子園に連れて行くらしい。げんさんも、めぐるも、俺達も。』



キリ

『‥!?』




まーしー

『お前、鬼山達に絡まれた時に言ったんだよな?「俺達には今しかねんだよ!」て。』



キリは横にトラックを止めてサイドブレーキを上げた。

『お前ら‥本気か?』





まーしー

『少なくとも周助は本気だ。俺も腹をくくった。もううちの高校は廃校で老人ホームだ。部室は残ってるみたいだから、思い出に顔だけでも出せよ?』


と肩を叩いて、降りるまーしー。




残されたキリ。

『俺なんかに何ができんだよ。』


続く。。

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